温度とともに指数関数的に変化するリーク電流を、温度センシングに活用する技術

スイッチ素子(MOSトランジスタ)をオフしたときに流れるリーク電流(もれ電流)は、温度上昇とともに指数関数的に増大することが知られています。それなら、リーク電流でチップ上の温度がセンシングできないだろうか、と考えたのがこの研究の発端です。リーク電流の大きさをモニタするために、図のような構成を考案しました。初期状態ではリーク生成回路内のパワースイッチ(PS)をオンして、VGND(Virtual Ground)と記した配線上の電荷をすべて放電します。モニタ動作の開始とともにクロックで叩くカウンタを動作させ、同時にPSをオフすると、リーク生成回路内の論理回路を流れるリーク電流によりVGND線が徐々に充電され、その電圧が基準電圧(VREF)に到達したらカウンタを停止します。リーク電流が多いほどVGND線の充電が速くなり短い時間で基準電圧に達するので、カウンタ値は小さくなります。あらかじめ温度とカウンタ値の関係を調べておけば、チップを実使用する際に、カウンタ値から温度を知ることができるという原理です。

宇佐美研では、この方式を使った温度センサ回路について、シミュレーションやチップ試作を通じて研究を行っており、かなり低い電源電圧でも動作することが確認されています。一方、高温になるとセンシングできる解像度が低下する問題点が明らかになり、現在、これを解決する方式の研究や、カウンタを使わずに行う方式の研究を進めています。

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